イラク特措法案の問題点について（６月２７日）

　新聞やテレビで、イラク特措法案の問題点が報道されるようになってきています。焦点・論点を少しまとめてみます。

【イラク戦争の肯定】
　法案は第一条でイラク侵略戦争を事実上肯定しています。与党側から「国連３決議に基づいて…」の部分を削除したらどうかという意見が出ましたが、首相や官房長官は「削除するつもりはない」と突っぱねています。その論理は、イラク側が査察を全面的に受け入れなかったから武力行使になってしまった、悪いのはフセインだ→フセインが見つかっていないから大量破壊兵器がなかったとは断定できない（いつか見つかるだろう）→政府の「米の武力行使支持」の判断は今でも正しかった、というものです。
　この法案の前提は、小泉政権の戦争犯罪問題としてもっと徹底的に追及すべきです。「大量破壊兵器を処理・除去する」ことを口実に大量破壊兵器を使い、大量殺人をし、生活環境を大量に破壊して、復興や人道支援などとどうして言えるのか、という基本的問題です。国会審議では、野党側も（謝罪もなく人道的支援は必要という立場で）この論争点を通り過ぎようとしていますが、けっしてあいまいにしてはいけません。

【派遣の根拠と目的、支援対象】
　自衛隊派遣の根拠としている「国連決議1483」の問題です。政府は、戦争に反対した国も含めてこの国連決議に賛成し、一致してイラク復興に協力しようとしている→この決議で国連加盟国の復興支援が呼びかけられている→１３ヵ国が軍隊を派遣している、自衛隊を出して当然だ、という論理を展開しています。たしかに「決議1483」はイラク復興への国際協力を呼びかけていますが、あくまで決議の中心は米英国の占領統治権と石油収入の管理を定めたことにあります。だから米英軍を実体とする連合国暫定統治機構は「ＣＰＡ」の略称で呼ばれ、「Ｕ」のつかない非国連組織です。また、１３ヵ国と言っても肝心の独仏ロ中は軍隊や要員を派遣していません（金や物資は少し出している）。国際的には戦力軍への派遣と参加になるからです。
　自衛隊の支援対象についても重要です。２６日の答弁などでは「イラク国民に水を運ぶ」ような印象を与えようとしていますが、与党調査団長の杉浦氏（自民）は「イラクに20数万人の軍人がいるが、…浄水、給水は大変喜ばれる」と語ったように、給水活動だけをとってもそれは占領軍組織への支援行為になっています。法案は「国連加盟国が行うイラクの国内における安全」（第3条）と書いており、自衛隊の支援対象はあくまで「国連加盟国」＝米英軍です。

【自衛隊の活動内容】
　与党のイラク調査団が帰ってきて国会で報告しました。とくに公明党の議員が率先して「有能な自衛隊の派遣が求められている」「戦闘地域はなかった」などと発言しています。怒りに耐えません。
　政府は、事前に浮き彫りになった米英軍への「武器弾薬、兵員の輸送」活動を薄めて見せるため、「水の浄化・配給と人員・物資空輸が業務の柱」と表現するように変えています。さらに、陸上自衛隊の活動案は、今のところ�@バグダッド空港近くなどでの給水や浄水、�A治安維持にあたる米英軍などへのガソリンなどの補給、�B傷病兵など人員・物資の輸送や救援物資の輸送、をあげています。やわらかい表現を使おうと苦労しているようですが、中身は米英占領軍への兵站活動そのものです。

【戦闘地域か否か】
　法案は「戦闘行為がない地域」（第2条）への派遣を定めています。しかし現実には米英軍の検問所などでも戦闘が起きており、連日死者が出ています。戦争と反撃戦は続いています。イラク国内のどこに派遣しようとも侵略戦争継続中・軍事占領中の地域への派遣であり、戦闘を準備しながら兵站任務に就くという現実になります。
　佐藤議員（自由）は「法案では戦闘行為をする組織がいなければ戦闘地域は存在しなくなり、自衛隊はどこでも派遣できてしまうのではないか」と質問し、福田官房長官は「戦闘・非戦闘地域の線引きをどうするか、分類や提起の仕方を検討する。緻密な調査、諸外国からの十分な情報を得て、総合的に判断する」と答えました。石破防衛庁長官は「どの地域でどんな団体が戦闘行為をしているか、特定できる調査が行われていない。調査団を派遣し、プロの目で峻別する」と言いました。ちゃんと調査して線引きするから、この法案に賛成してくれ、という意味でしょうが、苦しい答弁です。１日5〜10件のペースで米英軍襲撃が戦われており、自衛隊が行けば必ず「撃たれる前に撃て」という話になります。

【武器の使用】
　武器の使用問題については、委員会ではまだ踏み込んだ質疑がなされていません。しかし�@陸海空3自衛隊から1000人規模の派遣、�A「おおすみ」型輸送艦と護衛艦をペルシャ湾に派遣、�Bクウェート経由でイラク南部から自衛隊車両を陸送、�C無反動砲なども所持、などが報道で明らかにされています。これらは「基本計画で定める」として逃げようとしますが、もっと徹底的に暴露し、追及していく必要があります。

　首相は自衛隊の海外派遣のための恒久法構想について「将来の課題として国民的な議論を踏まえながら検討すべきだ」と述べ、将来的な検討課題との考えを示した。首相は「憲法の範囲内で自衛隊が海外でどのような平和活動を行うのがふさわしいか、恒久法がいいという議論は自民党内にもある」と述べた。